【第2話】そもそもお茶屋とは [お茶屋@和の修行日記]
*これは、かれこれ7年くらい前の
*お茶屋のお話。
第1話は こちら → *
「Dだ!Dだ♪」とはしゃぐヒラタさんを
無視をするよりもさかのぼること7〜8年。
小生が家業のお茶屋を継いだのが、
だいたいそのくらいの頃合いでしょう、
うん、記憶は曖昧。。。
みなさん、こんにちは。
小さい頃から、
「お茶屋になる」ことは
必然だと思っていた。
幼少期の文集を紐解いても、
将来の夢は「稼業のお茶屋を継ぐこと」と、
力強い字で記してある(←これ ホント)。
そして、
小さい頃から理数系が得意というよりは
国語系が苦手だったため、
大学は迷わず理工各部へ進学、
そのまま当時わりと流行の
外資系IT企業へ就職。
何か大義があったとかそんなんじゃないけど、
このまま稼業を継ぐよりは、
少し世の中の風にあたって
その空気感を知りたいというか、
学生ながらにそんな風に思ったのだ。
そして「稼業を継ぐ」のが前提である以上、
短期間で自分の実力を試せるような、
そんな環境が望ましいと考え「外資系」を選択、
学生時代に予備知識をもっていた「IT企業」を選んだ。
だからこそ、
サラリーマン生活は
きっと人並み以上に頑張れたのだと思うけど、
自分で設定していた「5年」を契機に
稼業のお茶屋を継いだ訳だ。
もちろん、IT業界に嫌気がさして転職、
といったことではない。
むしろその逆、お給料なんか見てしまうと、
転職することによって半減しちゃうし、
会社の経費で取得させてもらった資格なんかは、
当時日本では十数名しか保持していない
希少なスキルだったので、
この転職話を耳にした仲間は、
「もったいない!」
「ついに気でも狂ったか!?」
とそれなりに心配してくれたものである。
ここらで唐突な自己紹介は置いといて、
一言で「お茶屋」と言っても、
漠然としていてはっきりとイメージしにくと思うので、
改めて整理しよう。
一般的にはいわゆる「喫茶店」や
「和菓子をいただきながら一服できる店」
ないしは
「日本茶をはじめ紅茶やウーロン茶など茶葉を扱う販売店」
がしっくりくるだろうけど、
我が稼業はその分類においては
後者に属する。
その「販売店」の中でも、
蒲南茶荘は日本茶オンリー、
その中でも「深蒸し茶」に特化、
そしてその中でも"超"がつく深蒸し茶のみを扱うらしいのだが、
要するにかなりマニアックなお店、
そう専門店である。
もちろん、
そういった「専門店」は何も蒲南茶荘だけではなく、
街のあちこちに存在する。
ただ、ちょっと気になってみたので、
作業場の本棚にある無造作に並べてあった茶業関連書から、
都内におけるその店舗数を調べてみた。
何となくはそう思っていたけど、
やはりその数は大きく減少しており、
最盛期に比べるとすでに半減しているではないか。
もはや虫の息であることは、
疑う余地もなそうだ。
なんともどんよりとした
そんな空気に包まれる感じ、
「これって実は大問題だよね・・・」
早速、
となりの作業場にいる我が師匠に
聞いてみることにした。
(つづく)
【第1話】ヒラタさん(仮名) [お茶屋@和の修行日記]
*これは、かれこれ7年くらい前の
*お茶屋のお話。
15時になるといつもやってくるヤマト便の運ちゃん、ヒラタさん(仮名)。
蒲南茶荘から発送する荷物を、集荷にやってくるのだ。
運ちゃんと言えば、ごついイメージかあるかもしれないけど、
ヒラタさんは170cmくらいで細身、
姿勢はすっごくよくて歩幅は狭め。
いつも
「この荷物は重いなぁ・・・」
「今日は少ないな・・・」
っとボソッと一言、
シュールに残しさっていくのが得意技。
そしてもうひとつの隠し持った特技があって、
実はお茶の味が人並み以上、
いやむしろお茶屋バリに分かるということ。
そんなヒラタさんに、
ねぎらいのお茶で
おもてなしするのが小生、
お茶屋@和こと御年32歳独身、
こんにちは。
いつものように、
集荷作業を終え当然のように作業場の椅子に腰掛けるヒラタさん、
要するにその乾いた喉を潤さんとする「お茶」を要求している、
そう「お茶で一服タイム」を要求しているのだ。
そして座るやいなや、
何やら封書をちらつかせている。
そう、最近のヤマト便は、
集荷のついでに表のポストに入っている郵便物・封書類も、
持ってきてくれるのだ。
(注:ヒラタさんだけです)
「これ、早く見よう、見よう」っと、
子供のようにはしゃぐ様子を尻目に、
お茶の用意をはじめるわたくし。
ポットからまずは急須に湯通し、
これで洗い残りがあっても大丈夫。
続いて湯冷まし代わりに湯のみ2つお湯を注ぎ、
すぐさま見本用の茶缶から小ぶり急須の底が
ちょうど見えなくなるくらい茶葉を無造作にいれる。
いよいよ2つ湯のみから急須へお湯を注ぎ、
時を待たずして急須にさっと注ぎ分ける。
我ながら手慣れた手さばきにホレボレする・・・
わけもなく、
ヒラタさんは「早く見よう、早くー」と、
子供か!
淹れたてのお茶がはいった湯のみを
そそくさと差し出し、
封書を取り上げ裏面を見ると
「東京都茶協同組合」
の文字列が目にび込む。
はて、いつもの適当な・・・もとい、
大事なご案内かと思いきや、
よく見れば「調査報告書」と書き添えられている。
全く身に覚えのないこととはいえ「調査報告書」などといわれれば、
やはり気になるところ。
早速封を開けてみれば、
「平成21年度 新茶期 組合員販売茶報告書」
「(株)蒲南茶荘 様」
と。
続いて目に飛び込んできたのは
「貴店の調査結果」「1、内質・・・滋味」
「D」
「ふーん、Dね。・・・D!?」
「評価 D」と言われれば、
まっさきに思い返すのが大学時代の成績。
そう、まさに心臓の止まるような評価、
いや心臓が止まる評価、
これは落第点である。
しかもお茶業界において「滋味」と言えば、
まさに一番重要なポイントじゃん。
「Dだ!Dだ♪」
はしゃぐヒラタさんを無視して、
とりあえずこの事態を
となりの拝見場(お茶を審査する場所)にいる師匠に
報告せねばと席を立つお茶屋。
この結果はいくらなんでもマズいだろ、と。
(つづく)
*お茶屋のお話。
15時になるといつもやってくるヤマト便の運ちゃん、ヒラタさん(仮名)。
蒲南茶荘から発送する荷物を、集荷にやってくるのだ。
運ちゃんと言えば、ごついイメージかあるかもしれないけど、
ヒラタさんは170cmくらいで細身、
姿勢はすっごくよくて歩幅は狭め。
いつも
「この荷物は重いなぁ・・・」
「今日は少ないな・・・」
っとボソッと一言、
シュールに残しさっていくのが得意技。
そしてもうひとつの隠し持った特技があって、
実はお茶の味が人並み以上、
いやむしろお茶屋バリに分かるということ。
そんなヒラタさんに、
ねぎらいのお茶で
おもてなしするのが小生、
お茶屋@和こと御年32歳独身、
こんにちは。
いつものように、
集荷作業を終え当然のように作業場の椅子に腰掛けるヒラタさん、
要するにその乾いた喉を潤さんとする「お茶」を要求している、
そう「お茶で一服タイム」を要求しているのだ。
そして座るやいなや、
何やら封書をちらつかせている。
そう、最近のヤマト便は、
集荷のついでに表のポストに入っている郵便物・封書類も、
持ってきてくれるのだ。
(注:ヒラタさんだけです)
「これ、早く見よう、見よう」っと、
子供のようにはしゃぐ様子を尻目に、
お茶の用意をはじめるわたくし。
ポットからまずは急須に湯通し、
これで洗い残りがあっても大丈夫。
続いて湯冷まし代わりに湯のみ2つお湯を注ぎ、
すぐさま見本用の茶缶から小ぶり急須の底が
ちょうど見えなくなるくらい茶葉を無造作にいれる。
いよいよ2つ湯のみから急須へお湯を注ぎ、
時を待たずして急須にさっと注ぎ分ける。
我ながら手慣れた手さばきにホレボレする・・・
わけもなく、
ヒラタさんは「早く見よう、早くー」と、
子供か!
淹れたてのお茶がはいった湯のみを
そそくさと差し出し、
封書を取り上げ裏面を見ると
「東京都茶協同組合」
の文字列が目にび込む。
はて、いつもの適当な・・・もとい、
大事なご案内かと思いきや、
よく見れば「調査報告書」と書き添えられている。
全く身に覚えのないこととはいえ「調査報告書」などといわれれば、
やはり気になるところ。
早速封を開けてみれば、
「平成21年度 新茶期 組合員販売茶報告書」
「(株)蒲南茶荘 様」
と。
続いて目に飛び込んできたのは
「貴店の調査結果」「1、内質・・・滋味」
「D」
「ふーん、Dね。・・・D!?」
「評価 D」と言われれば、
まっさきに思い返すのが大学時代の成績。
そう、まさに心臓の止まるような評価、
いや心臓が止まる評価、
これは落第点である。
しかもお茶業界において「滋味」と言えば、
まさに一番重要なポイントじゃん。
「Dだ!Dだ♪」
はしゃぐヒラタさんを無視して、
とりあえずこの事態を
となりの拝見場(お茶を審査する場所)にいる師匠に
報告せねばと席を立つお茶屋。
この結果はいくらなんでもマズいだろ、と。
(つづく)